SoftBank

平成十八年（二〇〇六年）、突如として日本の情報通信業界を激震させる大事件が起こりました。イギリスの巨大通信会社、ボーダフォンの日本法人を買収するという、ソフトバンクグループによる電撃発表でした。当時、携帯電話の利用者が急増する中で、ボーダフォンは日本市場への適応に苦戦し、思うような成果を挙げられていませんでした。そのため、この突然の買収劇は業界関係者だけでなく、多くの国民にとっても寝耳に水の大ニュースとなりました。 人々が驚きをもってこのニュースを受け止めた背景には、ソフトバンクグループのこれまでの事業展開がありました。インターネットサービスプロバイダ事業や固定電話事業で成功を収めていましたが、携帯電話事業への本格参入は未知の領域でした。イギリスの大企業を相手に、巨大な資金を投じて買収に踏み切ったソフトバンクグループの創業者、孫正義氏の決断は、まさに大胆不敵と言えるものでした。 孫氏は、この買収を足掛かりに日本の携帯電話事業に本格参入し、革新的な料金体系やサービスで市場に旋風を巻き起こすという壮大な構想を抱いていました。当時、携帯電話料金は高額で、複雑な料金体系に不満を持つ利用者も少なくありませんでした。孫氏は、そこに目を付け、利用者のニーズに応える分かりやすい料金プランや、当時としては画期的なサービスを次々と投入していく戦略を描いていたのです。 この前代未聞の買収劇は、成功すれば日本の携帯電話業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めていました。しかし、同時に大きなリスクも伴う挑戦でした。誰もが固唾を呑んで見守り、成り行きを見定めようとしていました。まさに、日本の情報通信業界の未来を占う一大転換点となった出来事でした。