
知られざる携帯アプリ開発基盤:BREW
二〇〇一年、アメリカのクアルコム社が開発した携帯電話向けアプリ開発環境「ブリュー」は、当時としては画期的な技術でした。正式名称を「バイナリー・ランタイム・エンバイロメント・フォー・ワイヤレス」と言い、無線通信端末での様々な機能の実現を可能にしました。今でこそ、携帯電話で様々なことができるのは当たり前ですが、当時は限られた機能しか持たない機種が主流でした。そんな中、ブリューはまるで魔法の箱のように、携帯電話の可能性を大きく広げる役割を担ったのです。
ブリューが登場した当時は、「スマートフォン」という言葉すら一般的ではありませんでした。携帯電話でアプリを使うという文化もまだ始まったばかりでした。ブリューは、まさにその夜明けを支えた立役者と言えるでしょう。限られた性能の中で効率的に動くように設計され、開発者にも使いやすかったため、多くの開発者に支持されました。そして、ゲームや便利な道具、情報提供など、様々な魅力的なアプリが次々と生み出されたのです。
ブリューとよく比較されるのが「ジャバ」という技術です。どちらも携帯電話上で様々な機能を実現できるアプリ開発環境を提供していました。しかし、ブリューはジャバに比べて処理速度が速く、電池の消費量も少ないという利点がありました。そのため、限られた資源の中で動作させる必要のある携帯電話には最適でした。
現代では高性能なスマートフォンが普及し、ブリューは過去の技術のように思われるかもしれません。しかし、ブリューはアプリ開発の草分け的存在として、現代のモバイルアプリの隆盛の礎を築いたと言えるでしょう。ブリューが切り開いたモバイルアプリの世界は、今もなお進化を続けています。まさに、ブリューは携帯電話アプリ開発の黎明期を支えた、忘れられない存在なのです。