
インターネットの始まり、ARPANET
時は一九六九年、世界は冷戦の真っ只中にありました。アメリカとソビエト連邦という二つの超大国が、核兵器の開発と配備で睨み合い、一触即発の緊張感が世界を覆っていました。もし核戦争が勃発したら、従来の集中管理型の通信網は一瞬で破壊されてしまう。この深刻な問題に危機感を抱いたのが、アメリカ国防総省の高等研究計画局、ARPAです。
ARPAは、核攻撃にも耐えうる、新しく強い情報通信網の構築を計画しました。これがARPANETであり、まさにインターネットの始まりと言えるでしょう。ARPANETは、分散型ネットワークという画期的な概念を採用しました。これは、複数の拠点に情報を分散して保管することで、一部が破壊されても全体としては機能し続けるという、当時としては非常に斬新な仕組みでした。
情報を小包に分割して送信し、受信側で再び組み立てるパケット交換方式も、ARPANETの革新的な技術の一つです。この方式のおかげで、回線が混雑していても、それぞれの小包が最適な経路を選んで送信されるため、効率的に情報を送受信することが可能になりました。現代のインターネット通信も、このパケット交換方式を基盤としており、ARPANETの技術がどれほど先進的だったかが分かります。現代社会に欠かせないインターネットの礎石は、冷戦という緊迫した国際情勢の中で築かれたのでした。