トランジスタ

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開発

ベル研究所:革新を生み出す技術の殿堂

話し伝えの道を大きく変えた研究所のお話です。今からおよそ100年前の1925年、電話や電報の会社として有名なアメリカの会社が、ベル研究所という特別な部署を作りました。この研究所は、電気を使った話し伝えの技術をもっと良くするために作られた、いわば専門家集団の秘密基地のようなものです。 当時はまだ遠くの人と話すことも、声をはっきりと伝えることも難しい時代でした。ベル研究所の研究者たちは、遠くの人とも話せるように、そしてもっとクリアに声が聞こえるように、寝る間も惜しんで知恵を絞りました。その結果、遠く離れた場所にいる人とでも会話ができる技術や、相手の声がより自然に聞こえる技術など、たくさんの新しい技術が生まれました。 まるで魔法のような技術革新は、人々の暮らしを大きく変えました。遠く離れた家族や友人と気軽に話せるようになり、より強い繋がりを感じられるようになったのです。また、企業活動も活性化し、世界中の人々がより密接に関わり合うことができるようになりました。 ベル研究所の功績は、単に会社の利益のためだけではありませんでした。人々の暮らしを豊かにし、社会全体を大きく前進させる力となったのです。そして、その影響力は今もなお、私たちの暮らしの中に息づいています。ベル研究所は、一つの会社の研究所という枠を超えて、科学技術の進歩を引っ張っていくリーダーとして、世界中から尊敬と注目を集め続けているのです。
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省電力技術の主役:相補型MOS

相補型金属酸化膜半導体、略して相補型MOSは、電子機器に欠かせない技術です。身近なパソコンや携帯電話など、様々な機器で使われています。この技術は、二つの異なる種類の半導体、N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタを組み合わせた構造が特徴です。この二つの半導体は、まるでシーソーのように反対の動きをします。 N型MOSトランジスタは、電子を流すのが得意です。電圧をかけると、電子が流れ始め、回路に電流が流れます。一方、P型MOSトランジスタは、正孔と呼ばれる電子の抜け穴を流すのが得意です。こちらも電圧をかけると、正孔が移動し、電流が流れます。重要なのは、この二つの半導体が、互いに反対の性質を持っていることです。 相補型MOSでは、この二つの半導体を巧みに組み合わせることで、電力の無駄な消費を抑えることができます。例えば、回路に電流を流したい時は、N型MOSトランジスタに電圧をかけ、P型MOSトランジスタには電圧をかけません。すると、N型MOSトランジスタだけが電流を流し、P型MOSトランジスタは電流を流しません。反対に、電流を止めたい時は、N型MOSトランジスタへの電圧を止め、P型MOSトランジスタに電圧をかけます。 このように、二つの半導体が互いに補い合うことで、電流を流す時だけ電力を消費し、電流を流さない時は電力を消費しないように制御できます。これが、相補型MOSが低消費電力である理由です。この省電力性能のおかげで、電池で動く携帯機器や、小型化が進む電子機器に広く利用されています。まるで呼吸をするように、電気が必要な時だけ流れ、不要な時は止まる、そんな巧みな仕組みが、私たちの生活を支えているのです。
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現代社会を支える縁の下の力持ち:相補型金属酸化膜半導体

今の電子機器には欠かせない部品に、相補型金属酸化膜半導体というものがあります。これは一般的にシーモスと呼ばれ、電気をあまり使わないという大きな特徴があります。一体どのようにして電気を節約しているのでしょうか。 シーモスの構造を見てみると、P型とN型と呼ばれる二種類のトランジスタが組み合わさっています。トランジスタとは、電気の流れを制御する小さなスイッチのようなものです。P型トランジスタとN型トランジスタは、それぞれ得意な電流の流し方が違います。シーモスではこの二種類のトランジスタを上手に組み合わせることで、無駄な電気を減らしています。 例えば、電気を流す必要がない時、シーモスはどちらの種類のトランジスタもほぼ完全にオフの状態にします。つまり、スイッチを切って電気が流れないようにするのです。しかし、ただスイッチを切るだけでは、次に電気を流したい時に備えて、電圧は保持しておかなければなりません。シーモスは、電気を流さない状態でも電圧を保持することができる特別な構造をしています。ちょうど、水道の蛇口を閉めても水道管の中には水圧が残っているようなものです。このように、シーモスは電気を流していない時でも電圧を維持することができ、電気を流す時だけ必要な電力を消費するので、無駄がありません。 私たちの身の回りにある、電話や持ち運びできる計算機など、電池で動く機器の多くは、このシーモスのおかげで長時間使うことができます。もしシーモスがなかったら、これらの機器はすぐに電池が切れてしまい、とても使い物になりません。シーモスは、現代の便利な生活を陰で支えている、縁の下の力持ちと言えるでしょう。
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ムーアの法則:技術進化の道標

計算機の心臓部とも言える集積回路。その性能の進化を象徴する法則にムーアの法則があります。この法則は、集積回路に組み込まれる部品であるトランジスタの数が、一定の期間で倍になると予測したものです。1965年、計算機部品を作る会社の創業者の一人であるゴードン・ムーア氏によって提唱されました。 ムーア氏は、集積回路の製造に携わる中で、ある興味深い現象に気付きました。それは、回路に詰め込めるトランジスタの数が、およそ一年半から二年で倍増していくという事実です。当初、この観察は製造にかかる費用を減らす目的で利用されていました。より多くのトランジスタを一つの回路に組み込めれば、一つあたりの部品の値段を抑えることができるからです。 しかし、ムーアの法則は単なる費用の話にとどまりませんでした。やがて、集積回路の中核部品であるマイクロプロセッサの性能向上を予測する指標としても使われるようになったのです。トランジスタの数が倍になれば、計算機の処理能力も上がり、より複雑な作業を速くこなせるようになります。この法則は、計算機の性能が飛躍的に向上していくことを予見し、事実その通りになりました。 ムーアの法則は、計算機技術の発展を促す重要な役割を果たしました。部品メーカーは、この法則に基づいて将来の性能向上を見込み、研究開発を進めました。また、計算機を使う人々も、将来の性能向上を期待して、新たな利用方法を考え出しました。ムーアの法則は、単なる技術予測にとどまらず、計算機の世界全体の未来像を示す羅針盤のような役割を果たしてきたと言えるでしょう。
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小さな巨人:ICの威力

今の私たちの暮らしを支える携帯電話や家電製品、そして車など、あらゆる電子機器には、「電子回路」と呼ばれる電気の通り道が組み込まれています。この電子回路は、まるで人体における血管のような役割を果たし、様々な電子部品を繋いで、それぞれの機器を動かしています。そして、この電子回路の中核を担う、言わば心臓のような部品こそが「集積回路」、略して「IC」です。 ICは、小さな半導体の板の上に、トランジスタ、ダイオード、抵抗といった電子部品をぎっしりと詰め込んだものです。その小ささは、肉眼では細部まで見ることが難しいほどで、顕微鏡を使うことで初めて、その精緻な構造を確認することができます。目に見えないほどの微細な世界に、数え切れないほどの部品が組み込まれている様子は、まさに驚異的と言えるでしょう。 トランジスタは、電気の流れを制御するスイッチのような役割を果たし、ダイオードは、電気を一定方向にしか流さない整流作用を持ち、抵抗は、電気の流れを調整する働きをします。これらの部品が複雑に組み合わさることで、ICは様々な機能を発揮することができるのです。 かつて、これらの電子部品は一つ一つが大きく、それらを組み合わせて回路を作るには大きな装置が必要でした。しかし、ICの登場により、これらの部品を極小サイズに集積することが可能になり、電子機器の小型化、軽量化、そして高性能化が飛躍的に進みました。 この小さなICが、私たちの生活を大きく変え、情報化社会の発展に大きく貢献してきたと言えるでしょう。例えば、携帯電話が小型化、高性能化し、誰もが気軽に持ち歩くことができるようになったのも、ICの進化のおかげです。これからもICは進化を続け、私たちの生活をより豊かにしていくことでしょう。