
一つのCPUで複数の仕事をする仕組み
皆さんは机に向かい、書類を作成しながら、音楽を聴き、時折、調べ物をすることもあるでしょう。まるで同時に複数のことをこなしているように感じますが、人間の脳もコンピュータの中央処理装置(CPU)のように、真の意味で同時に複数の作業を処理することはできません。では、どのように複数のことを並行して行っているように見えるのでしょうか。それは短い時間で作業を切り替えているからです。
コンピュータもこれとよく似た仕組みで動いています。一つのCPUは一度に一つの処理しかできませんが、非常に短い時間で次々と処理を切り替えることで、複数のプログラムが同時に動いているように見せています。これを「擬似マルチタスク」と言います。例えば、文章を書きながら音楽を聴く場合、CPUはほんのわずかな時間で文章作成の処理と音楽再生の処理を交互に行います。切り替えの速度が非常に速いため、私たちには複数の作業が同時に行われているように感じられるのです。
この切り替え作業はオペレーティングシステム(基本ソフト)と呼ばれるソフトウェアによって管理されています。基本ソフトは、どのプログラムにどれだけの処理時間を割り当てるかを決め、CPUに指示を出します。この高度な時間管理によって、私たちはパソコンで複数の作業を滞りなく行うことができるのです。もし、この仕組みがなければ、一つの作業が終わるまで他の作業を始められないため、作業効率は大幅に低下するでしょう。例えば、インターネットで大きな資料をダウンロードしている間は、他の作業が一切できなくなってしまう、といった具合です。擬似マルチタスクは、私たちがコンピュータを快適に利用するために欠かせない重要な技術と言えるでしょう。