マルチプログラミング:複数のプログラムを同時実行
ITを学びたい
先生、『マルチプログラミング』って、複数のプログラムを同時に動かすことですよね?パソコンで複数のアプリを同時に開いているようなイメージでしょうか?
IT専門家
うん、良いところに気がついたね。複数のアプリを同時に開いているように見えるのは、まさにマルチプログラミングの成果の一つだよ。ただし、厳密に言うと、同時に動いているように『見える』ってところがポイントなんだ。
ITを学びたい
見える、だけ?ということは、実際には同時に動いていないんですか?
IT専門家
そうなんだ。コンピュータの処理装置は、短い時間でプログラムを切り替えながら、それぞれのプログラムを少しずつ実行している。切り替えが非常に速いので、私たちには同時に動いているように見えるんだよ。これを『時分割処理』と言うんだ。マルチプログラミングでは、この時分割処理を使って複数のプログラムを並行して進めることで、全体としての処理効率を上げているんだよ。
multiprogrammingとは。
『複数のプログラムを同時進行しているように見せる技術』という意味の『マルチプログラミング』という言葉について説明します。これは『マルチタスク』とも呼ばれます。
マルチプログラミングとは
計算機は様々な仕事をこなしますが、その中心となる頭脳の役割を果たすのが中央処理装置、つまり計算処理装置です。計算処理装置の時間を無駄なく使うことは、計算機の性能を最大限に引き出す鍵となります。そのための重要な技術の一つが、複数の仕事の手順を同時並行で処理しているように見せる「複数手順処理」です。
複数手順処理では、一つの仕事の手順が、例えば外部装置との情報のやり取りなどで計算処理装置を使わない待ち時間になった時、計算処理装置はすぐに別の仕事の手順に切り替えて処理を始めます。そして、最初の仕事の手順の待ち時間が終わると、再びそちらに戻って処理を再開します。このように、複数の仕事の手順を少しずつ順番に処理することで、計算処理装置の待ち時間を減らし、全体的な処理速度を向上させることができます。
複数手順処理は、複数の仕事の手順をまるで同時に進めているように見えるため、「多数作業処理」とも呼ばれます。確かに、利用者から見ると複数の仕事が同時に進んでいるように感じますが、実際には非常に短い時間で次々と仕事の手順を切り替えているため、同時進行しているかのような錯覚を生み出しているのです。
例えば、文章を書きながら同時に音楽を聴き、さらにインターネットで情報を検索するといった作業を想像してみてください。これらは同時にできているように見えますが、実際には計算処理装置がそれぞれの作業を高速で切り替えていることで実現しています。
このように、複数手順処理は限られた計算処理装置の時間を有効に活用することで、計算機の効率を大幅に向上させる重要な技術となっています。計算機が多くの仕事をスムーズにこなせるのは、この技術のおかげと言えるでしょう。
複数手順処理(多数作業処理) |
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計算処理装置の待ち時間を利用して、複数の仕事の手順を少しずつ順番に処理する技術 |
利用者には複数の仕事が同時進行しているように見える |
実際は非常に短い時間で次々と仕事の手順を切り替えている |
計算処理装置の時間を有効活用し、計算機の効率を大幅に向上させる |
マルチプログラミングの仕組み
複数のプログラムをあたかも同時に動かしているように見せる仕組み、それがマルチプログラミングです。一つの計算機で複数の仕事を同時進行しているかのように処理できるのは、巧みな切り替えの技のおかげです。この切り替えを担うのが、計算機のあらゆる動作を管理する基本的なプログラム、いわば計算機の司令塔であるオペレーティングシステムです。
まず、オペレーティングシステムは、実行可能な状態の複数のプログラムを主記憶装置に読み込みます。主記憶装置は、計算機が処理するデータやプログラムを一時的に保管する場所です。次に、どのプログラムに中央処理装置(計算機の頭脳)を割り当てるかを決めます。中央処理装置は、プログラムの命令を実行する重要な役割を担っています。
プログラムが外部装置からの入力待ちなどで処理を中断しなければならない状態になったとき、オペレーティングシステムは即座に中央処理装置を別のプログラムに割り当てます。例えば、あるプログラムが印刷機の準備完了を待っている間に、別のプログラムに計算処理をさせたり、また別のプログラムに画面表示をさせたりするのです。この切り替えは非常に高速で行われるため、利用者には複数のプログラムが同時に動いているように見えます。
この素早い切り替えの仕組みは、さながらオーケストラの指揮者が、様々な楽器を奏でる演奏者たちの演奏をまとめ上げ、美しいハーモニーを作り出す様に似ています。指揮者がそれぞれの楽器の音量や演奏時間を調整するように、オペレーティングシステムも複数のプログラムの実行状況を常に監視し、適切なタイミングで中央処理装置の割り当てを切り替えることで、計算機全体の効率を最大限に高めているのです。
マルチプログラミングの利点
マルチプログラミングは、コンピュータの中央処理装置を効率的に活用し、システム全体の処理能力を向上させるための重要な技術です。中央処理装置は、複数のプログラムをまるで高速で切り替えながら実行しているかのように動作します。一つのプログラムが例えばデータの読み込みといった処理を待っている間、中央処理装置はすぐに別のプログラムの実行に切り替わります。これにより、中央処理装置が何もせずに待っている時間が大幅に減り、常に何らかの処理を実行している状態を維持できます。
例えるなら、工場の複数の生産ラインを同時に稼働させるようなものです。一つのラインが材料の入荷待ちで停止している間も、他のラインは稼働し続け、全体としての生産効率を高めます。マルチプログラミングも同様に、中央処理装置という資源を最大限に活用することで、多くの仕事を短い時間でこなすことを可能にします。
さらに、マルチプログラミングは複数の利用者が同時にコンピュータシステムを利用できるようにします。それぞれの利用者は、あたかも自分だけがコンピュータを使っているかのようにプログラムを実行できます。他の利用者のプログラムが同時に実行されていても、利用者はそれを意識する必要はありません。これは、大きな建物の中に複数の部屋があり、それぞれの利用者が自分の部屋で作業を行っている状況に似ています。利用者は他の部屋で何が起こっているかを気にすることなく、自分の作業に集中できます。このように、マルチプログラミングは限られた資源を共有しながら、複数の利用者が快適にコンピュータを利用できる環境を提供します。
マルチプログラミングのメリット | 概要 | 例え |
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CPUの効率的な活用と処理能力向上 | CPUが複数のプログラムを高速で切り替えながら実行し、待ち時間を減らす。 | 工場の複数の生産ラインを同時に稼働させる。 |
CPUの稼働率向上 | CPUが常に何らかの処理を実行している状態を維持する。 | ー |
複数利用者の同時利用 | 複数の利用者が同時にコンピュータシステムを利用でき、他の利用者を意識する必要がない。 | 大きな建物の中に複数の部屋があり、それぞれの利用者が自分の部屋で作業を行う。 |
資源の共有 | 限られた資源を共有しながら、複数の利用者が快適に利用できる。 | ー |
マルチプログラミングの課題
複数の処理を同時に行うことで計算機の利用効率を高める仕組みであるマルチプログラミングは、多くの利点を持つ反面、いくつかの難しさも抱えています。まず、複数のプログラムが同時に主記憶装置上に配置されるため、主記憶装置の管理が複雑になります。限られた容量の中で、それぞれの処理に適切な領域を割り当て、上書きなどを防ぐための工夫が求められます。これは、共同住宅で限られた駐車スペースを各住人に適切に割り当てるようなもので、入念な管理体制が必要となります。
次に、複数の処理が共通の資源、例えば印刷装置や補助記憶装置などを利用する場合、資源の奪い合いが起こる可能性があります。例えば、二つの処理が同時に同じ印刷装置を使おうとすると、出力内容が混ざってしまうといった問題が発生する可能性があります。このような事態を防ぐためには、資源を適切に管理し、各処理が順番に利用するような仕組みを作る必要があります。これは、共同で利用する洗濯機を順番に使うための予約システムのようなもので、適切なルール作りと管理が必要です。
さらに、処理を切り替える際にも負担が生じます。一つの処理を中断し、別の処理を開始するためには、処理の状態を保存したり、復元したりする作業が必要となるため、その度に余分な時間がかかります。処理の切り替えが頻繁に行われると、この切り替え作業のための時間が積み重なり、全体的な処理速度が遅くなる可能性があります。これは、料理中に別の作業を頻繁に挟むと、かえって料理全体の時間がかかってしまうのと似ています。
これらの課題を解決するために、様々な工夫が凝らされています。主記憶装置の管理手法の改善、資源を適切に割り当てるための仕組み、処理の切り替えを効率的に行うための技術など、多くの研究開発が行われています。これらの技術により、マルチプログラミングはより効率的に利用できるようになり、計算機の性能向上に大きく貢献しています。
課題 | 説明 | 例え |
---|---|---|
主記憶装置の管理 | 複数のプログラムが主記憶装置上に同時に配置されるため、限られた容量の中でそれぞれの処理に適切な領域を割り当て、上書きなどを防ぐ必要がある。 | 共同住宅で限られた駐車スペースを各住人に適切に割り当てるようなもの。 |
資源の奪い合い | 複数の処理が共通の資源(例:印刷装置、補助記憶装置)を利用する場合、資源の奪い合いが起こる可能性がある。 | 共同で利用する洗濯機を順番に使うための予約システムのようなもの。 |
処理の切り替えの負担 | 処理を切り替える際に、処理の状態を保存・復元する作業が必要となり、切り替えが頻繁だと全体的な処理速度が遅くなる可能性がある。 | 料理中に別の作業を頻繁に挟むと、かえって料理全体の時間がかかってしまうのと似ている。 |
まとめ
複数のプログラムをあたかも同時に動かしているように処理する技術、それがマルチプログラミングです。これは、現代の計算機システムにおいて、なくてはならない重要な技術となっています。中央処理装置、つまり計算機の頭脳にあたる部分を無駄なく使い、複数の仕事を同時に行うことで、システム全体の働きを良くする、これがマルチプログラミングの役割です。
たとえば、文章を書きながら、同時に音楽を聴き、さらにインターネットで情報を検索する。このような作業をスムーズに行えるのも、マルチプログラミングのおかげです。中央処理装置は、非常に高速で処理を行いますが、一つの作業を終えるまで次の作業に移れないとしたら、待ち時間が発生し、全体としての処理速度は遅くなってしまいます。マルチプログラミングは、それぞれのプログラムを少しずつ順番に処理することで、待ち時間を隠蔽し、全体的な処理能力を高めているのです。
しかし、複数のプログラムを同時に扱うということは、記憶領域の管理や、プログラム同士が資源を取り合うといった問題も生じさせます。例えば、複数のプログラムが同じ記憶領域を使おうとすると、データが壊れてしまう可能性があります。また、中央処理装置や周辺機器といった資源を複数のプログラムが同時に使おうとすると、競合が発生し、システム全体の動作が不安定になる可能性があります。
このような問題に対処するために、様々な工夫が凝らされています。記憶領域を適切に分割し、各プログラムに割り当てることで、データの破壊を防ぐ技術や、資源へのアクセスを順番に制御することで競合を防ぎ、システムの安定性を保つ技術などが開発されています。これらの技術は、マルチプログラミングを支える重要な要素であり、日々進化を続けています。
このように、マルチプログラミングは、計算機システムの性能向上に大きく貢献する一方で、複雑な課題も抱えている技術です。今後、計算機システムがさらに高度化していく中で、マルチプログラミングの重要性と、それに伴う課題への対応の重要性は、ますます高まっていくでしょう。
マルチプログラミングとは | 複数のプログラムをあたかも同時に動かしているように処理する技術 |
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目的 | CPUを無駄なく使い、複数の仕事を同時に行うことで、システム全体の働きを良くする |
メリット | 待ち時間を隠蔽し、全体的な処理能力を高める |
例 | 文章を書きながら、音楽を聴き、インターネットで情報を検索する |
問題点 | 記憶領域の管理、プログラム同士の資源の取り合い |
問題点への対策 | 記憶領域の分割、資源へのアクセスの制御 |