FORTRAN：科学技術計算の立役者

FORTRAN：科学技術計算の立役者

計算の言葉、ＦＯＲＴＲＡＮ

計算を行う機械、電子計算機。その機械に複雑な計算をさせるには、機械が理解できる言葉で指示を出す必要があります。人間同士が意思疎通をするために日本語や英語といった言葉を使うように、電子計算機にも専用の言葉があるのです。その言葉の一つが「ＦＯＲＴＲＡＮ」です。

ＦＯＲＴＲＡＮは、科学技術計算を得意とする歴史ある言葉です。今からおよそ７０年前の１９５６年、ＩＢＭという会社で開発されました。「高級言語」と呼ばれる種類の言葉としては、世界で初めて実際に使われるようになったのです。では、高級言語とはどのような言葉でしょうか？それは、人間にとって理解しやすい形で計算の手順を記述できる言葉のことです。ＦＯＲＴＲＡＮが登場する以前は、電子計算機への指示は、まるで暗号のような、非常に難解な記号の羅列で示されていました。一般の人々にとって、電子計算機を扱うことは大変難しい作業だったのです。ＦＯＲＴＲＡＮの登場により、より多くの人々が電子計算機を容易に利用できるようになりました。

ＦＯＲＴＲＡＮという名前は、「式変換」（formula translation）という言葉から来ています。「式」とは、数学で使われる計算式のことです。つまりＦＯＲＴＲＡＮは、人間が書いた計算式を、電子計算機が理解できる形に変換するための言葉なのです。まさに計算のための言葉と言えるでしょう。ＦＯＲＴＲＡＮは、科学技術の進歩に大きく貢献してきた計算の言葉なのです。

科学技術計算での活躍

科学技術計算は、現代の様々な分野で欠かせないものとなっています。航空機の設計や気象予測、原子力発電所の安全確認など、高度な計算を必要とする場面で、計算機によるシミュレーションやデータの解析は重要な役割を担っています。そして、これらの計算を支えるプログラミング言語として、長年にわたり活躍してきたのが「FORTRAN」（数式変換言語）です。

FORTRANは、名前の通り、複雑な数式を自然な形で表現することに優れています。物理学や化学、工学といった分野では、現象を数式で表し、その数式に基づいて計算を行うことが不可欠です。FORTRANは、これらの数式をそのままプログラムに落とし込むことができるため、研究者や技術者は、計算の仕組みに集中することができます。

また、FORTRANは大規模な計算を効率的に行うことも得意としています。科学技術計算では、膨大な量のデータを処理する必要がある場合が多く、計算速度が非常に重要になります。FORTRANは、計算速度を重視して設計されているため、他の言語に比べて高速に計算を実行できます。この高速処理能力は、スーパーコンピュータを使った大規模シミュレーションなどで特に威力を発揮します。

FORTRANは長年の歴史を持つ言語であり、多くの利用実績と高い信頼性を誇ります。過去の膨大なプログラム資産がFORTRANで書かれており、これらのプログラムは現在でも様々な分野で利用されています。また、FORTRANは標準化がしっかり行われているため、異なる計算機環境でも同じプログラムを動かすことが容易です。このような信頼性と互換性の高さも、FORTRANが科学技術計算の分野で選ばれ続ける理由の一つです。

長く活躍してきた歴史

計算用の言葉を扱う道具として、半世紀もの長い間、活躍を続けているのが、フォートランです。生まれてからずっと、計算機の技術の進歩とともに、フォートラン自身も成長を続けてきました。

たとえば、計算機の性能を最大限に引き出すための、新しい機能が次々と追加されました。これによって、より速く、より正確な計算ができるようになり、科学技術計算や数値計算といった、複雑な計算を必要とする分野で、なくてはならない存在となっています。

古い道具であるにもかかわらず、常に最新の技術を取り入れ、改良を重ねてきた結果、今でも最先端の研究や開発の現場で、現役として活躍しています。まるで、熟練の職人さんが、長年使い込んだ道具を、時代に合わせて丁寧に手入れし、使い続けているかのようです。

フォートランが、これほど長く使われ続けているのは、多くの利用者からの意見や要望を、開発者たちが真摯に受け止め、改善に努めてきたからです。利用者と開発者が、まるで息の合った二人三脚のように、協力し合うことで、フォートランは進化を続けてきました。

これからも、計算機の技術は進歩していくでしょう。しかし、フォートランは、その変化に合わせて、常に進化し続け、計算の世界を支えていくことでしょう。まるで、時代に合わせて姿を変えながら、生き続ける、たくましい生命のようです。

学びやすさと使いやすさ

計算機の言葉として、古くから広く使われているのがフォートランです。フォートランは、他の計算機の言葉に比べて、学びやすい言葉と言われています。その理由はいくつかあります。まず、言葉の組み立て方が分かりやすいという点です。まるで普通の文章を書くように、計算の手順を指示していくことができます。そのため、初めて計算機の言葉を学ぶ人でも、比較的簡単に理解し、自分のプログラムを作ることができます。

次に、フォートランには、あらかじめ用意された便利な道具がたくさんあります。これらの道具は「関数」と呼ばれ、複雑な計算を簡単に実行するために使われます。例えば、難しい数学の計算や、大量の情報の整理など、複雑な処理も、関数を使うことで、比較的簡単にプログラムの中に組み込むことができます。そのため、一から全部自分でプログラムを書く必要がなく、作業時間を大幅に短縮できます。

これらの特徴から、多くの大学や研究所で、フォートランは教育用の言葉として使われています。学生たちは、フォートランを通して計算機の言葉の基礎を学び、科学技術計算など、様々な分野の研究に役立てています。また、フォートランを学ぶための教科書や参考書、インターネット上の資料なども豊富にあり、学ぶための環境は十分に整っていると言えるでしょう。さらに、フォートランは長い歴史を持つ言葉であるため、世界中で多くの利用者がいます。そのため、困ったことがあったときに、相談できる相手を見つけやすいという利点もあります。このように、学びやすさと使いやすさを兼ね備えたフォートランは、計算機の言葉を学ぶ上で、最適な選択肢の一つと言えるでしょう。

今後の展望とＦＯＲＴＲＡＮの未来

計算機の技術は、まるで生き物のように絶えず変化し続けており、様々な新しいプログラムを作る言葉も次々と現れています。そんな中、古くから使われている「計算の言葉」であるＦＯＲＴＲＡＮは、その長い歴史と積み重ねてきた実績、そして科学技術の計算を行う上での優れた性能から、これからも大切な役割を担っていくと考えられています。特に、非常に大きな計算能力を持つ計算機を使った大規模な計算の分野では、ＦＯＲＴＲＡＮの持つ強みは、他の追随を許さないほど確かなものと言えるでしょう。

ＦＯＲＴＲＡＮは、科学や技術の進歩に貢献してきたという輝かしい過去を持っています。そして、これからも進化を続け、未来の科学技術の発展を支えていくことが期待されています。計算機の性能が向上したり、新しい計算方法が登場したりするのに合わせて、ＦＯＲＴＲＡＮ自身も変化していくことで、これからも科学技術計算の分野を支え続けることができるでしょう。例えば、最新のＦＯＲＴＲＡＮでは、複数の計算機を同時に使って計算を行う並列計算といった、高度な計算技術にも対応できるようになっています。これにより、膨大な量のデータを処理する必要がある、現代の科学技術の課題にも対応できるようになっています。

また、ＦＯＲＴＲＡＮは、科学技術計算に特化した様々な機能が豊富に備わっているため、複雑な計算を簡潔に記述することができます。これは、計算の正確性を高めるだけでなく、プログラムを作る人の負担を軽減することにも繋がります。さらに、ＦＯＲＴＲＡＮは、長い歴史の中で培われてきた豊富な資料や利用者の集まりが存在するため、困った時に助けを求めたり、知識を共有したりすることが容易です。これらの要素が、ＦＯＲＴＲＡＮが科学技術計算の分野で選ばれ続ける理由となっています。そして、今後も様々な改良が加えられ、より使いやすく、より高性能な「計算の言葉」へと進化していくことでしょう。 ＦＯＲＴＲＡＮは、これからも科学技術の進歩を支える、なくてはならない存在であり続けるでしょう。