仕様書:開発における設計図
ITを学びたい
先生、『spec』(スペック)ってよく聞くんですけど、どういう意味ですか?
IT専門家
良い質問だね。『スペック』は、正しくは『仕様』と言って、作るものやシステムに対する細かい決まり事のことだよ。例えば、パソコンなら『画面の大きさは何インチ』、『CPUは何を使う』、『メモリの容量はどれくらい』など、色々な項目がある。
ITを学びたい
なるほど。パソコン以外にも、色々なものに使えそうですね。
IT専門家
その通り!例えば、新しく作る家の設計図も『仕様』だし、ゲームのルールも『仕様』と言えるね。何かを作る時やシステムを設計する時には、必ず『仕様』を決める必要があるんだよ。
specとは。
情報技術に関する言葉「スペック(仕様。英語のスペシフィケーションを短くしたものです)」について
仕様とは何か
仕様書とは、建物で言うところの設計図のようなものです。システムや道具、製品といったものを作る際に、どのような機能を持たせ、どのような性能にするのか、どのように動いてほしいのかといった具体的な内容を書き記したものです。家を作る際に設計図が欠かせないように、システム開発においても仕様書は必要不可欠です。
仕様書がしっかりしていないと、作り手は何を作っていいのか、どのように作ればいいのかが分からなくなってしまいます。その結果、頼んだ人や使う人が思い描いていたものとは違うものが出来上がってしまうかもしれません。例えば、ある人が職人さんに棚を作ってもらうとします。棚の大きさや材質、棚板の数などを具体的に伝えなければ、職人さんはその人の望み通りの棚を作ることはできません。棚の奥行きが足りなかったり、高さが合わなかったりするかもしれません。システム開発でも同じことが言えます。仕様書は、作り手が正しく理解し、意図した通りのものを作るための指針となるのです。
また、仕様書は、作り手だけでなく、使う人やお金を出す人など、関係者全員が同じ認識を持つためにも重要です。例えば、棚を作る例でいえば、棚を使う人と棚を作る人が棚の完成イメージを共有していなければ、棚の使い勝手は悪くなってしまうでしょう。システム開発でも、仕様書を通して関係者全員が同じ認識を持つことで、認識のずれによる手戻りやトラブルを防ぐことができます。
よく練られた仕様書は、プロジェクトを成功させるための重要な鍵となります。仕様書の作成には、関係者間での綿密な話し合いと情報共有が不可欠です。しっかりと時間をかけて仕様書を作成することで、後々の大きな問題を未然に防ぎ、スムーズな開発を進めることができるのです。
仕様書の役割 | 具体例(棚) | システム開発への応用 |
---|---|---|
設計図のようなもの。機能、性能、動作を具体的に記述 | 棚の大きさ、材質、棚板の数などを指示 | システムの機能、性能、動作を明確化 |
作り手が正しく理解し、意図した通りのものを作るための指針 | 職人さんが望み通りの棚を作れる | 開発者が意図した通りのシステムを作れる |
関係者全員が同じ認識を持つためのツール | 棚を使う人と作る人が完成イメージを共有 | 関係者全員がシステムの仕様を理解し、認識のずれを防ぐ |
作成における重要な要素 | 関係者間での綿密な話し合いと情報共有 | 関係者間での綿密な話し合いと情報共有 |
効果 | 後々の問題を未然に防ぎ、スムーズな開発を進める | 後々の問題を未然に防ぎ、スムーズな開発を進める |
仕様の種類
様々な種類がある仕様書ですが、大きく分けるとシステム全体を概観するもの、個々の機能に注目するもの、利用者の目に触れる部分の見た目や操作方法を定めるもの、情報の蓄積方法を定めるものなどがあります。それぞれ開発の段階や役割に応じて使い分けられます。
まず、システム仕様書は、まさに建物の設計図全体のようなものです。システムの目的、全体像、構成要素、利用する技術など、システム開発の基礎となる概要がここに記されます。いわば、これから建てるシステムの全体像を描き出す青写真と言えるでしょう。この仕様書は、開発の初期段階で作成され、関係者全体の共通認識を形成する上で重要な役割を担います。
次に、機能仕様書は、システムの個々の機能に焦点を当てたものです。各機能の動作、入力と出力、処理内容などが詳細に記述されます。システム仕様書で描かれた全体像を、具体的な機能という部品ごとに分解し、それぞれの動作を細かく規定するものです。これは、開発者がプログラムを組む際の設計図となり、システムの挙動を決定づける重要な役割を担います。
画面仕様書は、利用者が実際に操作する画面の設計図です。画面のレイアウト、ボタンや表示項目の配置、操作方法、画面遷移などが定義されます。利用者の使いやすさ、分かりやすさを左右する重要な仕様書であり、システムの見た目と操作性を決定づけます。
データベース仕様書は、システムで扱う情報をどのように保存するかを定義するものです。データベースの構造、データ項目の種類、データの関連性などが規定されます。情報の蓄積と管理方法を定めるもので、システムの安定稼働を支える重要な役割を果たします。
これらの仕様書は、開発の段階に応じて作成され、互いに連携しながらシステム全体の設計を明確にしていきます。プロジェクトの規模や特性に合わせて、必要な仕様書の種類や記述の程度も調整されます。それぞれの仕様書が持つ役割を理解し、適切に作成・活用することで、高品質なシステム開発が可能となります。
仕様書の種類 | 概要 | 役割 |
---|---|---|
システム仕様書 | システム全体の目的、全体像、構成要素、利用技術などを記述。システム開発の基礎となる概要。 | 関係者全体の共通認識の形成。開発の初期段階で作成。 |
機能仕様書 | システムの個々の機能に焦点を当て、動作、入力と出力、処理内容などを詳細に記述。 | 開発者がプログラムを組む際の設計図。システムの挙動を決定づける。 |
画面仕様書 | 利用者が操作する画面のレイアウト、ボタンや表示項目の配置、操作方法、画面遷移などを定義。 | 利用者の使いやすさ、分かりやすさを左右する。システムの見た目と操作性を決定づける。 |
データベース仕様書 | データベースの構造、データ項目の種類、データの関連性などを定義。情報の蓄積と管理方法を定める。 | システムの安定稼働を支える。 |
良い仕様の条件
優れた設計書には、いくつかの重要な条件があります。まず、誰にとっても分かりやすい表現で書かれていることが重要です。あいまいな言葉や、人によって解釈が変わるような書き方は避けなければなりません。設計書を読む人すべてが、同じ意味で理解できるように、明確な言葉を選ぶ必要があります。
次に、設計書の内容は正確でなければなりません。誤った情報や、現実離れした内容が含まれていると、開発作業に支障をきたします。実現できないことを要求する設計書や、逆に細かすぎる設計書も問題です。必要な情報を、適切なレベルで記述する必要があります。
設計書に矛盾があってはなりません。異なる場所に書かれた内容が矛盾していたり、内容同士が衝突していたりすると、開発作業が混乱します。設計書全体を通して、一貫性のある内容を保つことが重要です。
すべての必要な情報が、過不足なく含まれていることも重要です。情報が不足していると、開発作業を進める上で必要な判断ができなくなります。反対に、必要以上の情報が含まれていると、設計書が複雑になり、理解しにくくなります。
利用者の真のニーズを捉え、反映されているかどうかは、設計書の良し悪しを判断する上で重要な要素です。利用者のニーズを満たしていない設計書は、どんなに優れた技術を用いて作られていても、意味がありません。
最後に、常に最新の技術動向を把握し、設計書に反映させる努力が必要です。技術は日々進歩しています。古い技術に固執していると、時代遅れの製品しか作ることができません。常に新しい技術を学び、設計書に反映させることで、より良い製品を生み出すことができます。
優れた設計書の条件 | 詳細 |
---|---|
分かりやすさ | 誰にとっても理解できる明確な表現で書かれている。あいまいな言葉や解釈の分かれる書き方を避ける。 |
正確さ | 誤った情報や現実離れした内容を含まない。実現可能な内容で、適切なレベルで記述する。 |
矛盾がない | 異なる場所に書かれた内容が矛盾したり、衝突したりしない。全体を通して一貫性のある内容を保つ。 |
情報の網羅性 | すべての必要な情報が過不足なく含まれている。不足も過剰も避ける。 |
ニーズへの適合 | 利用者の真のニーズを捉え、反映している。 |
最新技術の反映 | 常に最新の技術動向を把握し、設計書に反映させる。 |
仕様作成のポイント
物を作り始める前に、設計図にあたる仕様書を作ることはとても大切です。良い仕様書を作るには、いくつか気を付ける点があります。まず使う人の立場になって、本当に必要なものを作ることが重要です。そのためには、使う人とよく話し合い、どんな機能がほしいのか、どんな風に操作したいのかを丁寧に聞き取ることが欠かせません。使う人の言葉で書かれた要望を、開発者にも分かる言葉で書き直すことも重要です。
次に、実際に作れるものかどうかを考えなければいけません。どんなに素晴らしい機能でも、今の技術では作れないのであれば意味がありません。使える技術や開発の期間、使えるお金などを考えて、現実的に作れる範囲で仕様を決めなければいけません。
さらに、後から変更しやすい仕様にすることも大切です。物を作っている途中で、使う人の要望が変わったり、技術的な問題が見つかったりすることはよくあります。そんな時に、仕様書を簡単に直せるように工夫しておく必要があります。例えば、機能ごとに小さな部品に分けて設計しておくと、一部分だけを直すことが簡単になります。全体像を分かりやすく図解しておくことも、変更時の混乱を防ぐのに役立ちます。
使う人のニーズ、実現可能性、変更への対応、これら三つの点をバランスよく考えて仕様書を作ることで、スムーズな開発を進めることができます。開発に関わる全員が同じ方向を見て、協力して作業を進めるためにも、分かりやすく、正確な仕様書が不可欠です。
仕様と開発プロセス
ものが作られる工程において、設計書はすべての段階で欠かせないものとなります。最初の段階である要求定義では、使う人の要望を聞き取り、設計書の大枠を作ります。どのようなものが求められているのか、どんな機能が必要なのかを明確にすることで、後の工程がスムーズに進みます。
次の設計段階では、大枠に基づき、細かい部分を詰めていきます。システムの構造や、一つ一つの機能の詳細を設計書に書き記します。まるで家の設計図を描くように、システムのあらゆる部分を細かく設計することで、具体的な形が見えてきます。
そして実装段階では、設計書を元にプログラミングを行います。設計書に書かれた通りにプログラムを組むことで、システムが形作られます。この時、設計書が明確であればあるほど、プログラミングはスムーズに進み、誤りが少なくなります。
最後にテスト段階では、設計書に基づいてシステムの動作確認を行います。設計書で定められた通りにシステムが動いているか、不具合がないかを徹底的に調べます。テストで見つかった問題は修正し、最終的に完成品へと近づけていきます。
このように、設計書はものが作られる工程全体を導く重要な役割を果たします。適切な設計書は、工程を効率化し、品質を高め、計画の成功に大きく貢献します。反対に、不適切な設計書は、やり直しや問題を引き起こし、計画の失敗につながる可能性があります。設計書は、まるで航海の羅針盤のように、ものづくりの方向性を示す大切な指針と言えるでしょう。
工程 | 設計書の役割 | 詳細 |
---|---|---|
要求定義 | 大枠作成 | ユーザーの要望を聞き取り、必要な機能や目的を明確にする |
設計 | 詳細設計 | システムの構造や個々の機能の詳細を設計書に記述する |
実装 | プログラミングの指針 | 設計書に基づいてプログラミングを行い、システムを構築する |
テスト | 動作確認の基準 | 設計書に基づいてシステムの動作確認を行い、不具合を修正する |
まとめ
計画を立てることは、仕組みを作る上でとても大切な仕事です。この計画書に当たるのが仕様書で、分かりやすく、間違いがなく、全てが書いてあり、矛盾がなく、誰でも理解できる仕様書を作ることが、良い仕組みを作ることに繋がります。しっかりとした仕様書があれば、作業がはかどり、質の高いものが出来上がり、計画全体の成功に大きく役立ちます。
仕様書を作る際には、使う人の望みをきちんと理解し、本当に作れるのかどうかを考え、後から変更があった場合にも対応できるようにしておく必要があります。作る人だけでなく、使う人や注文した人も含め、関係者全員が仕様書を理解し、同じ認識を持つことで、作業が滞りなく進みます。
例えば、家を建てる場合を考えてみましょう。家の設計図が仕様書に当たります。設計図が分かりにくければ、大工さんは家を正しく建てることができません。また、必要な情報が欠けていたり、部屋の広さが矛盾していたりすれば、完成した家は住みづらく、手直しが必要になるかもしれません。
同様に、仕組みを作る際にも、仕様書は設計図の役割を果たします。仕様書がしっかりしていれば、作る人は迷うことなく作業を進められ、出来上がった仕組みは使いやすく、質の高いものになります。
仕様書は、ただの書類ではありません。計画を成功させるための大切な道具です。常にその大切さを忘れずに、適切な仕様書を作り、活用していくことが重要です。
仕様書の重要性 | 仕様書の役割 | 良い仕様書の条件 |
---|---|---|
計画を成功させるための大切な道具 | 仕組みを作る上での設計図 | 分かりやすく、間違いがなく、全てが書いてあり、矛盾がなく、誰でも理解できる |
作業効率向上、高品質な成果物作成 | 関係者全員の共通認識を促進 | 後からの変更にも対応できる |