企業ネットワークの強い味方:IP-VPN
ITを学びたい
『IP-VPN』って、インターネットとは違う特別なネットワークのことですか?
IT専門家
そうだね。インターネットのようなみんなが使う回線ではなく、特定の利用者だけが使える専用の回線のようなものと考えていいよ。例えるなら、公道ではなく、自分たちだけが使える専用の道路のようなイメージだね。
ITを学びたい
なるほど。でも、インターネットと何が違うんですか?
IT専門家
インターネットは色々な人が使うから、渋滞したり、セキュリティの心配もあるよね。IP-VPNは専用回線のようなものだから、通信速度が安定していて、安全性も高いんだ。だから、会社などで重要な情報をやり取りする時によく使われているんだよ。
IP-VPNとは。
情報技術の用語で『IP-VPN』というものがあります。これは、通信会社が提供する情報ネットワークを、まるで自分専用の回線であるかのように使える技術やサービスのことです。VPNという技術の種類の一つで、みんなが使うインターネットを利用するインターネットVPNと比べると、安全性が高く、通信の質も良いという特徴があります。
概要
多くの会社では、各地に事務所や工場などを持ち、それらを繋いで情報をやり取りする必要があります。その際、インターネットを使う方法もありますが、セキュリティーの面で不安があります。また、通信速度も常に安定しているとは限りません。そこで登場するのが、通信会社が提供する「閉域網」を使った「IP-VPN」という技術です。
IP-VPNとは、インターネットのような誰でも使える回線ではなく、特定の利用者だけが使える専用のネットワークのようなものです。例えるなら、公道ではなく、自分たちだけが使える私道のようなものです。通信会社が持っている大きなネットワークの一部を、あたかも自社専用の回線のように利用できるのです。
この技術を使う一番のメリットは、セキュリティーが高いことです。インターネットのように不特定多数の人が使う回線ではないため、情報漏えいや不正アクセスのリスクを減らすことができます。また、通信の品質も安定しています。インターネットのように混雑して速度が遅くなる心配もありません。そのため、音声や動画などの大容量データもスムーズに送受信できます。
複数の拠点を持ち、セキュリティーと安定した通信を求める会社にとって、IP-VPNは非常に有効な手段です。まるで自社で専用線を敷設したかのような使い勝手で、重要な情報も安心してやり取りできます。導入コストや運用コストについても、通信会社と相談しながら最適なプランを選ぶことができます。
項目 | 説明 |
---|---|
IP-VPNとは | 特定の利用者だけが使える専用のネットワーク。インターネットのような公道ではなく、自分たちだけが使える私道のようなもの。 |
メリット | セキュリティが高い、通信の品質が安定している、音声や動画などの大容量データもスムーズに送受信できる。 |
デメリット | 導入コストや運用コストがかかる(ただし、通信会社との相談で最適なプランを選べる)。 |
向いている企業 | 複数の拠点を持ち、セキュリティーと安定した通信を求める会社。 |
仕組み
通信事業者が持つ広大な網の目のような通信網を活用し、その上に仮想的な専用の回線を構築することで実現するのが、いわゆる「仮想専用線網」です。この仮想的な回線は、ちょうどトンネルのような役割を果たします。このトンネルの中を通るデータは、他の利用者のデータと混じり合うことなく、安全に目的地まで届けられます。
例えるなら、地下トンネルを通る車のようなものです。地上の道路は多くの車が行き交い、混雑や事故のリスクも伴います。しかし、地下トンネルを通れば、そうしたリスクを回避し、スムーズに目的地まで辿り着けます。仮想専用線網も同様に、皆が利用するインターネットという公の場を通らずに、専用のトンネルのような経路でデータを送受信するのです。
インターネットは誰もが利用できる反面、情報漏洩などの危険性も潜んでいます。しかし、仮想専用線網は、こうした危険を回避し、安全な通信を実現します。まるで、大切な書類を厳重に守られた専用車で運ぶようなものです。外部からのアクセスを遮断し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
さらに、仮想専用線網は、通信の安定性も確保します。インターネットは、利用者の増減によって通信速度が変動することがあります。しかし、仮想専用線網は、専用の回線を確保しているため、常に安定した通信速度を維持できます。これは、動画配信やテレビ会議など、安定した通信品質が求められるサービスにとって非常に重要です。
このように、仮想専用線網は、安全性と安定性を兼ね備えた、現代社会に欠かせない通信手段と言えるでしょう。まるで、頑丈な壁で囲まれた専用の通路を通ることで、安全かつ確実に情報をやり取りできるのです。
項目 | 説明 | 例え |
---|---|---|
仮想専用線網 | 通信事業者の通信網上に構築された仮想的な専用回線。他の利用者のデータと混じり合うことなく、安全に目的地までデータを届けられる。 | 地下トンネルを通る車 |
インターネットの危険性 | 情報漏洩などの危険性がある。 | 混雑した地上道路 |
仮想専用線網の安全性 | インターネットの危険性を回避し、安全な通信を実現する。 | 厳重に守られた専用車で書類を運ぶ |
仮想専用線網の安定性 | 専用の回線を確保しているため、常に安定した通信速度を維持できる。 | – |
利点
社内ネットワークを結ぶ技術の一つとして、専用の回線を用いた通信網があります。これは、まるで各拠点が一つの大きな網で繋がっているかのように機能し、様々な利点をもたらします。まず、安全性という点で非常に優れています。インターネットのような誰でも使える回線を通らないため、外部からの不正アクセスや情報の漏洩といった危険性を大幅に減らすことができます。これは、会社の大切な情報を守る上で非常に重要です。
次に、通信の質が安定している点も大きな利点です。インターネットでは、利用者が集中する時間帯などに回線が混雑し、通信速度が遅くなったり、途切れたりすることがあります。しかし、専用の回線を使う場合は、通信事業者が帯域を適切に管理しているため、そのような問題は起こりにくく、常に安定した通信を維持できます。そのため、ビデオ会議や大容量ファイルの転送などもスムーズに行え、業務の効率化に繋がります。
さらに、活用の幅が広い点も見逃せません。拠点同士を繋ぐだけでなく、近年需要が高まっているクラウド上のサービスや、大量のデータを保管するデータセンターへの接続にも利用できます。それぞれの拠点から個別に接続するのではなく、この網を通じて一括して接続することで、管理の手間を省き、コスト削減にも繋がります。このように、専用の回線による通信網は、安全性、安定性、柔軟性を兼ね備えており、企業活動の様々な場面で大きな効果を発揮します。進化し続ける情報化社会において、なくてはならない技術と言えるでしょう。
特徴 | メリット |
---|---|
安全性 | インターネットのような公衆回線を通らないため、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に軽減。 |
安定性 | 通信事業者による帯域管理により、回線の混雑による速度低下や途切れが発生しにくく、常に安定した通信を維持可能。ビデオ会議や大容量ファイル転送もスムーズ。 |
柔軟性 | 拠点間の接続だけでなく、クラウドサービスやデータセンターへの接続にも活用可能。一括接続による管理コスト削減効果も期待できる。 |
種類
会社の情報をやり取りする仕組みである企業向け通信網(IP-VPN)には、主に二つの種類があります。一つは、階層2と呼ばれる種類で、情報の塊をそのまま送る方式です。これは、複数の事業所をあたかも一つの構内網のように繋ぐことができます。たとえば、東京の本社と大阪の支店を階層2で繋げば、まるで同じ建物の中にいるかのように、書類や情報を共有できます。この方式は、特別な設定をあまり必要としないため、導入が容易で、映像や音声などの大きなデータを送るのにも適しています。
もう一つは、階層3と呼ばれる種類で、情報の塊を送り先に合わせて振り分ける方式です。インターネットのように広範囲な仕組みを作るのに向いています。階層3では、それぞれの事業所に異なる番号を割り振ることで、情報を正確に送り届けることができます。たとえば、東京の本社、大阪の支店、福岡の営業所をそれぞれ異なる番号で管理すれば、本社から大阪の支店だけに情報を送ったり、特定の相手にだけ情報を送ったりすることが可能です。この方式は、大規模な仕組みにも対応でき、安全性も高いため、多くの企業で利用されています。
どちらの種類を選ぶかは、会社の規模や使い方によって大きく異なります。階層2は、設定が簡単で、大きなデータを送るのに適していますが、大規模な仕組みには不向きです。一方、階層3は、大規模な仕組みにも対応でき、安全性も高いですが、設定が複雑になる場合があります。それぞれの長所と短所を理解し、会社の状況に合わせて最適な種類を選ぶことが、効率的で安全な情報伝達を実現する上で重要です。
項目 | 階層2 | 階層3 |
---|---|---|
方式 | 情報の塊をそのまま送る | 情報の塊を送り先に合わせて振り分ける |
用途 | 複数の事業所をあたかも一つの構内網のように繋ぐ | インターネットのように広範囲な仕組みを作る |
例 | 東京の本社と大阪の支店を繋ぎ、書類や情報を共有 | 東京の本社、大阪の支店、福岡の営業所をそれぞれ異なる番号で管理し、特定の相手に情報を送る |
設定 | 容易 | 複雑になる場合あり |
データ転送 | 映像や音声などの大きなデータの転送に適している | – |
規模 | 大規模な仕組みには不向き | 大規模な仕組みにも対応可能 |
安全性 | – | 高い |
メリット | 導入が容易 | 大規模対応、安全性が高い |
デメリット | 大規模不向き | 設定が複雑 |
インターネットVPNとの比較
社内ネットワークを遠隔地から安全に利用するために、仮想的な専用回線を構築する技術は、大きく分けて二つの種類があります。一つは、インターネット回線を利用したものです。これは、インターネットを通じて仮想的な専用回線を構築するため、導入費用が安く済むという利点があります。しかし、誰もが利用するインターネット回線を使うため、回線の混雑状況に左右されやすく、通信速度が安定しないという欠点も抱えています。特に、動画の視聴や大きなファイルの送受信など、多くの情報をやり取りする際に、速度の低下が業務に支障をきたす可能性があります。また、セキュリティの面でも不安が残ります。インターネット回線は不特定多数の人が利用するため、悪意ある第三者による攻撃を受ける危険性が高くなります。そのため、重要な情報のやり取りには注意が必要です。
もう一つは、通信事業者が提供する専用回線を利用したものです。これは、インターネットとは別の専用回線を使うため、通信速度が安定しており、セキュリティも高いという特徴があります。インターネット回線の混雑に影響を受けないため、常に安定した速度で通信を行うことができます。また、専用回線であるため、外部からの攻撃を受けにくく、機密情報のやり取りも安心して行えます。しかし、構築や維持にかかる費用は、インターネット回線を利用するものよりも高額になります。そのため、予算との兼ね合いを考慮する必要があります。
どちらの技術も、それぞれ利点と欠点があります。導入費用を抑えたいのであれば、インターネット回線を利用したものが適しています。しかし、通信の安定性とセキュリティを重視するのであれば、専用回線を利用したものを選ぶべきでしょう。自社の事業内容や扱う情報の重要度、そして予算などを総合的に判断し、最適な方を選ぶことが大切です。
項目 | インターネットVPN | 専用線VPN |
---|---|---|
回線 | インターネット回線 | 専用回線 |
導入費用 | 安い | 高い |
通信速度 | 不安定 | 安定 |
セキュリティ | 低い | 高い |
利点 | 導入費用が安い | 通信速度が安定、セキュリティが高い |
欠点 | 通信速度が不安定、セキュリティが低い | 導入費用が高い |
導入
社内ネットワークを複数の拠点間で安全につなぐ技術である専用線網を新たに導入する際には、いくつかの段階を踏む必要があります。まず初めに、どの通信事業者を選ぶかが重要になります。事業者によって提供される回線の速度や安定性、料金、付加サービスなどが異なるため、自社のニーズに合った事業者を選ぶ必要があります。回線の速度は、扱うデータ量や通信の頻度によって適切な容量を選ぶ必要があり、過不足なく選ぶことで費用を抑えつつ快適な通信環境を実現できます。また、セキュリティ対策や保守体制なども重要な選定基準となります。
通信事業者が決まったら、必要な回線容量や具体的なサービス内容を決めていきます。これは、拠点間の通信量や必要な速度、セキュリティレベルなどを考慮して決定します。例えば、大容量のファイル転送が多い場合は、高速な回線が必要になりますし、機密性の高い情報を扱う場合は、より高度なセキュリティ対策が必要になります。これらの要件を明確にすることで、最適なサービスを選択できます。
必要な情報が整理できたら、事業者との契約手続きに進みます。契約内容をしっかりと確認し、不明点があれば質問して解消することが大切です。契約が完了したら、回線の敷設工事や機器の設定を行います。敷設工事は、専門の技術者によって行われます。機器の設定も、専門的な知識が必要となるため、事業者や専門業者に依頼するのが一般的です。
専用線網を導入する際には、自社のネットワーク構成やセキュリティに関する要件を把握しておくことが重要です。現在のネットワーク構成を理解し、新しい専用線網との接続方法やセキュリティ対策を検討する必要があります。専門業者に相談することで、より安全で効率的なネットワーク構築が可能になります。導入後も安定した運用を行うためには、保守や管理体制を整えておく必要があります。定期的な点検や障害発生時の対応など、長期的な視点で運用管理を検討することが重要です。