止まらないシステムを作るには?
ITを学びたい
先生、「フォールト・トレランス」って、どういう意味ですか?
IT専門家
簡単に言うと、コンピューターが壊れたり、問題が起きても、できる限り動き続けられる仕組みのことだよ。たとえば、停電しても電気がすぐ消えないように予備の電池を用意しておくようなイメージだね。
ITを学びたい
予備の電池みたいなものがあるってことですか?
IT専門家
そうだね。例えば、部品が壊れても、予備の部品ですぐに交換して動き続けられるようにしたり、大切なデータを何箇所にも保存しておいて、一箇所が壊れても大丈夫なようにしておく、といった工夫をすることで実現できるんだ。
fault toleranceとは。
情報技術の用語で『フォールト・トレランス』というものがあります。これは、コンピューターシステムに何らかの問題が起こった時、その影響をできるだけ小さくし、あるいは普通に動き続けられる能力のことです。例えば、急に電気が止まっても大丈夫なように予備の電源を用意したり、記録装置をいくつか使ったりすることで、システム全体に予備を持つようにして、この能力を高めることができます。他にも『耐障害性』や『故障許容力』などとも言います。
はじめに
今の世の中は、計算機仕掛けにすっかり頼ってしまっています。お金の出し入れを記録する銀行の仕組み、空を飛ぶ飛行機の動きを管理するもの、病院で患者さんの情報を管理するものなど、あらゆる場所で計算機仕掛けが役に立っています。もしも、これらの仕組みが急に止まったら、私たちの暮らしは大変なことになるのはすぐに分かります。
そこで大切になるのが、仕組みの『故障に強いこと』です。何か問題が起きても、動き続けられる力、つまり『止まらない仕組み』を作るにはどうすれば良いのか、これから詳しく見ていきましょう。
故障に強い仕組みを作るには、いくつかの方法があります。一つは、同じような機械をいくつか用意しておくことです。一つが壊れても、他の機械が代わりに動いてくれるので、全体としては動き続けることができます。これを『予備を用意する』と言います。
もう一つは、仕組みをいくつかの部分に分けて、それぞれが独立して動くようにすることです。一つの部分が壊れても、他の部分には影響が出ないようにすることで、全体が止まるのを防ぎます。
さらに、日頃からきちんと点検を行い、問題が起こりそうな部分を早めに直すことも大切です。普段から気を付けていれば、大きな問題になる前に対処できます。
また、もし問題が起きた時に、どのように対応するかをあらかじめ決めておくことも重要です。誰に連絡するか、どのように復旧作業を進めるかなどを決めておくことで、迅速な対応が可能になります。
これらの方法を組み合わせることで、より故障に強く、止まらない仕組みを作ることができます。私たちの生活を支える大切な仕組みを守るために、これらの考え方は欠かせないものとなっています。
故障に強い仕組みを作る方法 | 説明 |
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予備を用意する | 同じような機械をいくつか用意しておき、一つが壊れても他の機械が代わりに動いてくれるようにする。 |
仕組みを部分的に独立させる | 仕組みをいくつかの部分に分けて、それぞれが独立して動くようにすることで、一つの部分が壊れても全体が止まるのを防ぐ。 |
日頃の点検 | 問題が起こりそうな部分を早めに直すことで、大きな問題になる前に対処する。 |
対応手順を決めておく | もし問題が起きた時に、どのように対応するかをあらかじめ決めておくことで、迅速な対応を可能にする。 |
耐障害性とは
機器の故障や不具合、予期せぬトラブルといった問題が起きても、全体としては動き続けられる仕組みのことを、耐障害性と言います。これは、まるで自転車の予備タイヤのようなものです。タイヤが一本パンクしても、予備タイヤがあればそのまま走り続けられますよね。コンピューターシステムも同じで、一部に不具合が生じても、全体としてはきちんと動き続けることが大切です。
このような不具合には様々な種類があります。例えば、コンピューターを構成する部品の物理的な故障、プログラムの誤り、突然の停電、地震や洪水といった自然災害なども含まれます。これらの不測の事態によってシステムが停止してしまうと、業務が滞り、経済的な損失に繋がるだけでなく、場合によっては人の命に関わる重大な事態を引き起こす可能性も否定できません。
耐障害性の高い仕組みは、これらの問題が起きても影響を最小限に抑え、安定した動作を維持できるように設計されています。例えば、複数のコンピューターを連携させて、一台が故障しても他のコンピューターがその役割を肩代わりする仕組みや、重要なデータは複数の場所に保存して、一か所が損失しても他の場所から復元できるようにする仕組みなどがあります。
システムを設計する際には、こうした耐障害性を考慮することが非常に重要です。特に、銀行のオンラインシステムや、航空機の管制システム、医療機器など、高い信頼性が求められるシステムでは、耐障害性を最優先に設計する必要があります。万が一の事態に備え、システムが停止しないように、あるいは停止してもすぐに復旧できるように、様々な工夫が凝らされています。これにより、人々の暮らしの安全と安心を守ることができるのです。
耐障害性とは | 例 | 不具合の種類 | 重要性 | 設計の工夫 |
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機器の故障や不具合、予期せぬトラブルといった問題が起きても、全体としては動き続けられる仕組み。 | 自転車の予備タイヤ |
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具体的な方法
システムを止まらないようにするには、いくつかの方法があります。その中でも代表的なものが冗長化です。これは、システムの部品をいくつか用意しておき、一つが壊れても他の部品が代わりに動くようにする仕組みです。
例えば、料理を作る際に、包丁が一本しかない場合、その包丁が壊れてしまうと料理の続きができなくなってしまいます。しかし、予備の包丁を用意しておけば、万が一、使っていた包丁が壊れても、すぐに予備の包丁に持ち替えて料理を続けることができます。
これと同じように、コンピュータのシステムでも、重要な部品を複数用意しておきます。例えば、情報を処理する機械を複数台用意しておき、普段は全ての機械で同時に処理を行います。もし、そのうちの一台が壊れても、残りの機械が代わりに処理を引き継ぐため、システム全体としては処理を続けることができるのです。
同じように、情報を保存する装置も複数用意し、同じ情報をそれぞれの装置に保存しておきます。そうすれば、一つの装置が壊れて情報が読めなくなっても、他の装置から情報を読み出すことができるので、情報の消失を防ぐことができます。
また、停電対策も重要です。突然の停電でシステムが停止してしまうと、作業中のデータが失われたり、システムに不具合が生じる可能性があります。これを防ぐために、無停電電源装置を設置します。これは、停電が発生した場合でも、内蔵されている電池から電力を供給し、システムを一定時間稼働させ続ける装置です。これにより、停電時にも安全にシステムを停止させたり、復旧までの時間を稼ぐことができます。
このように、冗長化や無停電電源装置などを用いることで、システムの耐障害性を高め、安定した稼働を実現することができます。
対策 | 説明 | 効果 |
---|---|---|
冗長化 | システムの部品を複数用意し、一つが壊れても他の部品が代わりに動くようにする。 | 処理を続けることができる 情報の消失を防ぐ |
無停電電源装置 | 停電発生時に内蔵バッテリーから電力を供給し、システムを一定時間稼働させる。 | 停電時にも安全にシステムを停止させたり、復旧までの時間を稼ぐ。 |
様々な工夫
壊れにくい仕組みを作るには、システム全体を考える最初の段階から様々な工夫が必要です。システム全体をいくつかの独立した部品に分け、一つの部品に問題が起きても他の部品には影響が出ないようにすることで、被害が広がるのを防ぎます。まるで、防火扉で建物を区切るように、被害を狭い範囲に閉じ込めるのです。
また、定期的に記録の写しを取り、複数の場所に保管することで、記録が失われるのを防ぎ、問題が起きてもすぐに復旧できるようにします。これは、大切な書類をコピーして別の場所に保管しておくようなものです。
さらに、システムの状態を常に監視し、いつもと違うことが起きたらすぐに対応できる態勢を整えておくことも大切です。まるで、健康診断のように、システムの状態を常にチェックし、異変があればすぐに対応することで、大きな問題になる前に対処できます。
例えば、担当者を決めておき、いつでも連絡が取れるようにしておいたり、復旧の手順をあらかじめ決めておくことで、迅速な対応が可能になります。これらの対策を組み合わせることで、まるで頑丈な城のように、より壊れにくい、安心して使える仕組みを作ることができるのです。一つ一つの対策は小さなことかもしれませんが、積み重ねることで大きな効果を発揮します。常に改善を心掛け、より良いシステムを目指していくことが大切です。
対策 | 説明 | 例え |
---|---|---|
部品化 | システムを独立した部品に分割し、一部の障害が全体に影響しないようにする | 防火扉で建物を区切る |
バックアップ | 記録の写しを複数場所に保管し、データ損失を防ぎ、迅速な復旧を可能にする | 大切な書類をコピーして別の場所に保管 |
監視と対応 | システムの状態を常に監視し、異常発生時に迅速に対応できる体制を整える | 健康診断で異変を早期発見・対応 |
担当者と手順の明確化 | 担当者と連絡網、復旧手順を事前に決めておくことで迅速な対応を可能にする | – |
費用対効果
物事を行うには、それ相応の費用がかかります。特に、機器や仕組みが壊れにくく、長く使えるようにするには、お金が必要です。例えば、同じ機器を二つ用意しておき、一つが壊れてももう一つがすぐに使えるようにする、といった工夫です。これを専門用語で冗長化と言います。このような工夫をすると、当然、最初に買う物が多くなり、お金がかかります。
しかし、機器や仕組みが壊れてしまうと、もっと大きな損失につながる場合もあります。例えば、お店で使っている仕組みが壊れると、物が売れなくなり、お客さんが来なくなってしまいます。また、会社の評判も悪くなってしまうかもしれません。このような損失は、壊れにくい仕組みを作るためのお金よりも、ずっと大きなものになる可能性があります。
例えば、工場の機械を想像してみてください。もし、その機械が壊れて工場が止まってしまったら、一日でどれだけの損失が出るでしょうか?機械が壊れないように整備費用をかけることは、一見高く感じるかもしれません。しかし、工場が止まってしまうことによる損失に比べれば、整備費用は結果的に安いと言えるでしょう。
このように、壊れにくくするための費用と、壊れた時に出る損失を比べて考えることが大切です。これを費用対効果と言います。特に、銀行の仕組みや病院の機器のように、とても大切な仕組みには、多少お金がかかっても、壊れにくい仕組みを作るべきです。もしもの時に備えて、前もってしっかりと準備しておくことが、長い目で見ると、大きな利益につながるのです。
項目 | 説明 |
---|---|
冗長化 | 機器や仕組みが壊れにくく、長く使えるようにする工夫。例えば、同じ機器を二つ用意しておき、一つが壊れてももう一つがすぐに使えるようにする。 |
冗長化の費用 | 最初に買う物が多くなり、お金がかかる。 |
機器/仕組みの故障による損失 | お店の場合:物が売れなくなり、お客さんが来なくなり、会社の評判が悪くなる。 工場の場合:機械が壊れて工場が止まり、大きな損失が出る。 |
整備費用 vs. 損失 | 整備費用は一見高く感じるが、工場が止まってしまうことによる損失に比べれば、結果的に安い。 |
費用対効果 | 壊れにくくするための費用と、壊れた時に出る損失を比べて考えること。 |
重要な仕組みへの投資 | 銀行の仕組みや病院の機器のように、とても大切な仕組みには、多少お金がかかっても、壊れにくい仕組みを作るべき。 |
まとめ
今どきでは、計算機組織が滞りなく動くことは、なくてはならないものです。もし組織が止まれば、仕事や暮らしに大きな支障が出ます。計算機組織が止まらずに動き続ける力のことを耐障害性と言います。この耐障害性を高めることは、組織の信頼性を高め、仕事が続けられるようにするためにとても大切です。
計算機組織を止まらせないためには、色々な方法があります。例えば、主要な部品を二重にしておく方法があります。一つが壊れても、もう一つが代わりに動くので、組織全体は止まりません。また、組織の作り方を工夫することも大切です。一つの計算機に負担が集中しないように、複数の計算機で仕事を分担させれば、一つが壊れても全体への影響は少なくなります。さらに、組織の状態を常に監視することも重要です。異変があればすぐに気づき、対応することで、大きな問題になる前に防ぐことができます。
こうした対策には、お金がかかります。予備の部品を買ったり、組織を複雑にしたり、監視する仕組みを作ったりする必要があるからです。しかし、もし組織が止まってしまったら、仕事が滞り、顧客を失い、大きな損失が出ます。それを考えれば、耐障害性にお金をかけることは、必要な投資と言えるでしょう。
耐障害性をどの程度まで高めるかは、組織の重要度や費用対効果を考えながら決める必要があります。例えば、銀行のシステムは、少しの停止でも大きな影響が出るので、高い耐障害性が必要です。一方、それほど重要でない組織であれば、そこまでの耐障害性は必要ありません。必要な耐障害性の水準を見極め、適切な対策をとることで、無駄なコストを抑えつつ、安定した提供と仕事の成功につなげることができるでしょう。
耐障害性の重要性 | 現代社会において、計算機組織の安定稼働は必須であり、停止は業務や生活に大きな影響を与える。 |
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耐障害性とは | 計算機組織が止まらずに動き続ける力。 |
耐障害性を高めるメリット | 組織の信頼性向上、業務継続性の確保。 |
耐障害性向上のための方法 |
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耐障害性向上にかかるコスト | 予備部品、複雑なシステム構成、監視システムなど。 |
システム停止による損失 | 業務の停滞、顧客離れ、経済的損失。 |
耐障害性レベルの決定要因 | 組織の重要度、費用対効果。 |
適切な耐障害性 | 無駄なコスト抑制、安定稼働、業務の成功。 |