オブジェクトファイル:プログラムのかけら
ITを学びたい
先生、「オブジェクトファイル」って、何ですか?
IT専門家
簡単に言うと、コンピューターが直接実行できる命令が書かれたファイルのことだよ。人間が書いたプログラムをコンピューターが理解できる形に変換した中間段階のファイルだね。
ITを学びたい
人間が書いたプログラムから、どうやって作るのですか?
IT専門家
コンパイラやアセンブラといった変換ソフトを使って作るんだよ。プログラムを部品のように分割して、それぞれをオブジェクトファイルに変換し、後でそれらを結合して、最終的にコンピューターが実行できるプログラムになるんだ。
object fileとは。
コンピューターが直接実行できる命令で構成されたファイルである「オブジェクトファイル」(目的ファイルとも呼ばれます)について説明します。
オブジェクトファイルとは
人が書いた命令を計算機が直接理解できる言葉に変換するための中間段階の記録が、目的ファイルです。
人が計算機に指示を出すには、計算機が理解できる特別な言葉を使う必要があります。この言葉を機械語と呼びます。しかし、機械語は人が理解するには複雑で扱いにくいため、人はより分かりやすい言葉で命令を書きます。これを原始命令と呼びます。
原始命令を機械語に変換する過程は、いくつかの段階に分かれています。まず、原始命令を翻訳する作業があり、これを翻訳と呼びます。翻訳の結果、目的ファイルが作られます。目的ファイルには、機械語の命令や、命令で扱う情報などが含まれています。
目的ファイルは、最終的な実行可能な命令集を作るための部品のようなものです。完成品を作るには、これらの部品を組み合わせる必要があります。この組み合わせ作業を連結と呼びます。連結によって、全ての部品が一つにまとめられ、計算機が実行できる状態になります。
目的ファイルを使う利点は、命令の変更や修正が容易になることです。大きな命令集を一部分だけ修正する場合、全ての原始命令を翻訳し直す必要はありません。変更があった部分の原始命令だけを翻訳し、対応する目的ファイルだけを差し替えれば良いのです。これは、開発の効率を大幅に向上させます。また、複数の原始命令を別々に翻訳し、それぞれ目的ファイルを作成することで、作業を分担することも容易になります。
このように、目的ファイルは、命令開発の効率化、保守性の向上、共同作業の促進など、多くの利点をもたらす重要な中間生成物です。
項目 | 説明 |
---|---|
目的ファイルとは | 人が書いた命令を計算機が直接理解できる言葉に変換するための中間段階の記録。 最終的な実行可能な命令集を作るための部品のようなもの。 |
機械語 | 計算機が理解できる特別な言葉。 |
原始命令 | 人が計算機に指示を出す際に用いる、より分かりやすい言葉。 |
翻訳 | 原始命令を機械語に変換する作業。この結果、目的ファイルが作られる。 |
連結 | 複数の目的ファイルを組み合わせ、計算機が実行できる状態にする作業。 |
目的ファイルの利点 | 命令の変更や修正が容易になる。 開発の効率化、保守性の向上、共同作業の促進。 |
オブジェクトファイルの中身
部品のように個々のファイルに分けられたプログラムの断片、それが目的ファイルです。このファイルの中身は、大きく三つの要素で成り立っています。
一つ目は、計算機が直接読み解き実行できる命令の並びです。これは、プログラムの動作を具体的に指示する言葉のようなものです。目的ファイルに含まれる命令の並びは、既に計算機が理解できる形式に変換されているため、そのまま実行に使うことができます。
二つ目は、プログラムで扱う値です。数値や文字列など、様々な種類の値が含まれます。これらはプログラムの動作に必要な材料のようなもので、命令によって処理され、結果を生み出します。
三つ目は、一覧表のようなものです。この一覧表は、プログラムで使われる名前と、それに対応するメモリの場所を結びつけています。例えば、ある関数の名前がこの一覧表に記載されていれば、その関数がメモリのどの場所に配置されているのかをすぐに知ることができます。
この一覧表のおかげで、複数の目的ファイルを繋ぎ合わせることが容易になります。それぞれのファイルで定義された関数や値を、名前を通して共有することができるからです。また、プログラムの誤りを探す作業もこの一覧表によって効率化されます。特定の名前を持つ関数がメモリのどこにあるのか、すぐに探し出すことができるからです。
目的ファイルは独立した部品のように作られているため、プログラムの一部に変更があった場合でも、変更があった部分の目的ファイルだけを新しく作り直せば済みます。全てのファイルを最初から作り直す必要がないため、開発の時間を大幅に短縮することができます。さらに、一覧表の情報を使えば、プログラムがどのように動作しているのかを細かく追跡することも可能です。これは、プログラムの誤りを発見し修正する際に非常に役立ちます。
目的ファイルの要素 | 説明 | 利点 |
---|---|---|
命令の並び | 計算機が直接実行できる命令の列。プログラムの動作を具体的に指示する。 | そのまま実行可能。 |
値 | プログラムで扱う数値や文字列などのデータ。命令によって処理され結果を生み出す。 | プログラムの動作に必要な材料を提供。 |
一覧表 | プログラムで使われる名前とメモリの場所を対応付ける表。 | 複数の目的ファイルの連結を容易にする。誤り探索の効率化。プログラム動作の追跡を可能にする。 |
リンクの役割
部品を組み合わせて製品を完成させるように、計算機の中でもプログラムを作るには、複数の部品ファイルを繋げる必要があります。この繋げる作業を連結と言い、連結器という専用の道具を使って行います。対象ファイルとは、プログラムの一部となる未完成のファイルです。このファイル単体では計算機で動かすことができません。複数の対象ファイルを連結器で繋ぎ合わせて、初めて計算機で動かせる実行可能ファイルが完成します。
連結器は、複数の対象ファイルを読み込み、それぞれのファイルが参照している部品(関数や変数)の場所を記号表という案内図を使って特定します。記号表は、対象ファイルの中に含まれており、部品の名前と場所が記されています。連結器は、この記号表に基づいて、それぞれのファイルが参照している部品の場所を解決し、一つの実行可能ファイルにまとめ上げます。
連結の過程では、外部貯蔵庫と呼ばれる、便利な機能の集まりをプログラムに組み込むこともできます。外部貯蔵庫は、あらかじめ用意された部品の集まりで、よく使われる機能をまとめて提供しています。これにより、開発者は全ての機能を最初から作る必要がなくなり、開発の効率を大幅に上げることができます。例えば、画面に文字を表示する機能や、計算を行う機能などは、外部貯蔵庫として提供されていることが多く、開発者はそれらを再利用することで、開発時間を短縮できます。
連結は、プログラム開発における最終段階の一つであり、対象ファイルという部品を組み合わせて、完成品を作り上げる工程です。連結によって、計算機で実行可能なプログラムが完成し、私たちが様々な機能を利用できるようになります。
様々な形式
目的の処理系に合わせて、様々な形式のオブジェクトファイルが存在します。これらのファイルは、最終的に実行可能なプログラムを作るための中間生成物と言えるでしょう。異なる処理系では、ファイルの構造やデータの表現方法が大きく異なるため、異なる形式のオブジェクトファイルをそのまま組み合わせて使うことはできません。
例えば、マイクロソフト社のウィンドウズで使われる形式として、携帯可能実行ファイル形式(PE形式)と共通オブジェクトファイル形式(COFF形式)があります。これらはウィンドウズ環境での実行に適した構造を持っています。一方、ユニックス系の処理系では、実行可能連結形式(ELF形式)が広く使われています。また、アップル社のマックOSでは、マックO形式という独自の形式が採用されています。
これらの形式は、それぞれ異なる目的や利点を持っています。例えば、ある形式は特定の処理装置の構造に最適化されていたり、ある形式はプログラムの読み込み速度を重視していたりします。また、記号表と呼ばれる、プログラム中の関数や変数の名前とアドレスの対応表の構造も形式によって異なります。
異なる処理系で動くプログラムを作る場合は、それぞれの処理系に合わせたオブジェクトファイルを作る必要があります。変換処理をする翻訳系は、目的の処理系に合わせて適切な形式のオブジェクトファイルを作るようにできています。翻訳系が指示された環境に合わせたファイルを作ることで、最終的なプログラムが正しく動くようにしています。
OS | オブジェクトファイル形式 | 説明 |
---|---|---|
Windows | PE形式 COFF形式 |
Windows環境での実行に適した構造 |
Unix系 | ELF形式 | 広く使われている形式 |
macOS | Mach-O形式 | macOS独自の形式 |
まとめ
部品を組み合わせて、完成品を作る工程を想像してみてください。プログラムを作る作業も、これとよく似ています。プログラムの部品となるのが、オブジェクトファイルです。オブジェクトファイルとは、プログラムの一部を収めたファイルのことです。このファイルには、コンピュータが直接理解できる言葉である機械語や、プログラムで扱うデータ、そして部品の名前や場所が記された記号表などが含まれています。
オブジェクトファイルだけでは、プログラムとして動かすことはできません。まるでバラバラの部品をそのまま使うことができないように、これらを繋ぎ合わせる作業が必要です。この繋ぎ合わせ役を担うのが、リンカと呼ばれる道具です。リンカは、複数のオブジェクトファイルを繋ぎ合わせて、一つの実行可能なプログラムを作り上げます。ちょうど、部品を組み立てて完成品を作る工程と同じです。
オブジェクトファイルには、様々な種類があります。これは、使用するコンピュータの種類や、動作させる環境によって異なるためです。同じ部品でも、組み合わせる相手が違えば、形を変える必要があるのと同じです。それぞれの環境に合った適切なオブジェクトファイルを使うことで、プログラムを正しく動作させることができます。
プログラムを作る過程で、コンパイルとリンクという作業が行われますが、オブジェクトファイルは、この二つの作業を繋ぐ重要な役割を果たしています。コンパイルとは、人間が書いたプログラムを、コンピュータが理解できる機械語に変換する作業です。そして、リンクとは、コンパイルされた複数のオブジェクトファイルを繋ぎ合わせて、実行可能なプログラムを作り上げる作業です。これらの作業を理解することは、プログラム開発を効率的に行う上で欠かせません。
プログラムがどのように作られ、実行されるのかを理解することで、より効果的な作業を進めることができます。例えば、プログラムに誤りがあった場合、その原因を特定しやすくなります。また、様々な環境で動作するプログラムを作る際や、既存のプログラム部品を再利用する際にも、オブジェクトファイルの知識が役立ちます。これらの技術は、より高度なプログラム開発には欠かせないものです。そのため、オブジェクトファイルに関する知識は、プログラミング技術を向上させるための重要な土台となります。